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研究活動

2019.07.13

NOMの会

【第5回】水田の多様性

日本の水田から報告された生物種をリストアップした「改訂版 田んぼの生き物全種リスト」には、5,668種が掲載されている。しかしそこには、微生物を中心にまだ多くの漏れがあるので、現在、増補改訂作業を行っている。水田の環境変動は大きく、一般にパイオニア種が卓越する。しかし水田の環境変動に明確な年周期性があるので、生育に不適当な時期を水田内で休眠して過ごす生物や、毎年一定の時期に水田にやってくる生物なども含め、様々な生活史をもつ多くの種が共存することが可能になる。水田でフナの仔稚魚が育つと、ミジンコ類が選択的に食われてほぼ全滅し、その結果として原生生物の数も多様性も増大する。ハッタミミズやナゴヤダルマガエルなどの、西日本の水田にしか生息しない固有種は、おそらく中央構造線の北側に発達した広大な河川湖沼地帯の後背湿地で独自の進化を遂げ、人間がこの地域の後背湿地を利用し尽くした後に、似た環境である水田に生き残っているものと考えられる。

大塚 泰介【琵琶湖博物館 総括学芸員】
京都大学大学院農学研究科博士課程修了、博士(農学)。島根大学汽水域研究センター研究員を経て、2000年4月より滋賀県立琵琶湖博物館勤務。 本来の専門分野は珪藻の分類と群集生態学。日本珪藻学会誌 Diatom の編集委員長を6年間務め(2009~2014年)、現在は平の編集委員に戻っている。 「琵琶湖博物館はしかけ・たんさいぼうの会」影の会長。2010年より金尾滋史らと「琵琶湖地域の水田生物研究会」を開催。日本のミミズ最長記録保持者(ハッタミミズ:96 cm)
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